On The Roadの巻物を拝む
神戸のBBプラザ美術館で「ジャック・ケルアック『オン・ザ・ロード』とビート・ジェネレーション 書物からみるカウンターカルチャーの系譜」を見てきた。
去年開催される予定だったが、コロナで延期になっていたもの。
そして本来なら本物のタイプ原稿の巻物が展示される予定だったらしいが、レプリカでの展示となった。
わしの目的も、その本物の原稿を拝むことだったので、レプリカでの展示と知ったときには、正直モチベーションが下がったが、それでもやっぱり見てみたかったし、なによりこのコロナ禍でも開催してくれたことが嬉しかった。
まず京都から出ること自体4年ぶり?ぐらいだった。確か前回も神戸で、コスモスさんが妊娠中に元町の中華街に行って以来だと思う。
まず神戸について思ったのは、涼しい!梅雨明け十日にもかかわらず、京都とは明らかに違う爽やかな暑さ。こんなん秋やんって思った。
そしていざ入館。
名前から想像していた美術館というイメージとは違い、複合施設の中の展示スペースといった感じ。
まず入ってすぐに目に入ったのは、ケロアックが履いていたものという検定書とともに展示されていたジーンズ。
写真撮影禁止だったが、入り口で撮った写真に小さく写っているのが見えると思う。
そしてネットで見つけた、そのジーンズが売りに出されていた時の画像がこれ。
1960年代の Montgomery Ward Powr House 101 というジーンズ。
おそらくかなり太ってしまった晩年のものと思われる。
オン・ザ・ロードの中ではジーンズという言葉の代わりとしてLevi'sという言葉が使われていたので、意外だった。ケロアックはジーンズを普及させた一人でもあった。
こういったファッション面でもオン・ザ・ロードの影響は計り知れないものがある。
そして、いよいよ巻物を拝む。
長さ36メートルのうちの最初の10メーターぐらいがガラスケースに入れて展示されていた。出版されたバージョンで言うとパート1の終わりぐらいまでなので全体の三分の一ぐらいが見れるようになっていた。タイプされた原稿には、ケロアック自身によって鉛筆で修正が書き込まれていた。
紙を長く連ねて一気に書いた部分もあれば、1枚ずつ打ってあとからつなぎ合わせた部分もあった。印字の濃淡の差によって、インクリボンを交換したであろう部分もわかった。
やはり見てみないとわからない部分が多くあった。そのようなアナログな部分は現在のパソコンを使って書く文章作成とは全く違うものであり、まさに70年前の人間ケロアックの仕事ぶりを垣間見るようだった。余談だが、今年はこの原稿が書かれてからちょうど70年だ。
あとは、ケロアックや、ビート作家たちの初版本や、関連書物、グッズ、ポスター類、そして60年代のヒッピームーブメント、当時の日本の文化など、わりと多義に渡る展示で、ケロアック狂でなくても楽しめるように工夫されていた。
個人的に残念だったのは、小説の中でもかなり重要な要素の一つであるジャズに関してほとんど触れられていないことだった。
まあ、そのへんは、わしの専門分野なので、わしが作ったプレイリストを聞いてほしい。
思ったより見に来ている人が多かったが、巻物を拝んでいる人はほとんどいなかった。まあ、よっぽどオン・ザ・ロードに思い入れがなければ、チラ見で事足るものなのかもしれない。まあ、その分、独り占めしてゆっくり拝めたが。
展示場をでて、すぐ上の階にあった喫茶博物館 珈琲ポエムで食事をした。
展示に合わせて「ジャックケロアックのアップルパイセット」というのがあったので、迷わずそれにした。小説の中でケロアックが旅の間中ずっと食べ続けていた物だ。
そして京都に帰る。
京都駅に着いて、改めてその暑さの異常さに打ちのめされた。
帰りは、その暑い中、歩いて帰った。
My life is on the road よ、気分は。
愛読書は?と問われれば迷うことなく「On The Road」と答える。
何回読み直したかわからない。
そして、今、ライブができないこのコロナ禍において、この1年ほど、オン・ザ・ロードで英語の勉強をしているので、わしにとって今回のイベントは、まさにタイムリーだったわけだ。
小説の中に出てくる、What's your road man? 君の道は何だい?の問に、わしは Music road と即答する。しかし、現在、なかなか音楽活動ができなく、自由に旅をすることもできなく、先の見えない中、小説「オン・ザ・ロード」の中でジャックと一緒に旅をしているのかもしれない。
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