京都ケルアック聖地巡り「白幽子住居跡」

 「京都ケルアック聖地巡り」第二弾として、白幽子住居跡に行ってきた。前から行きたかったけど、ネットで調べても行き方がよくわからず、また「熊注意」とかの怖い情報もあってずっと躊躇していたんよね。

実際行ってみて、これは山登り初心者にはきついコースだなと思った。本当にたどり着くのか半信半疑のまま、ほとんど整備されていない不安定な山道をひたすら登るという感じ。でも、それゆえに住居跡を見つけたときの感動は大きかった。























昔は白幽子が住んでた洞窟があったらしいけど、石工たちがどんどん壊してしもて、もうそれ以上壊してくれるなということで明治時代に有名な南画の先生が石碑を立てたらしい。(拾得の飛び入り常連の徹さん情報)

以下がその白幽子が出てくる場面の原文と、わしの翻訳。

Jack Kerouac - The Dharma Bums chapter 13

“I wanta bicycle in hot afternoon heat, wear Pakistan leather sandals, shout in high voice at Zen monk buddies standing in thin hemp summer robes and stubble heads, wanta live in golden pavilion temples, drink beer, say goodbye, go Yokahama big buzz Asia port full of vassals and vessels, hope, work around, come back, go, go to Japan, come back to U.S.A., read Hakuin, grit my teeth and discipline myself all the time while getting nowhere and thereby learn…learn that my body and everything gets tired and ill and droopy and so find out all about Hakuyu.”

“Who’s Hakuyu?”

“His name meant White Obscurity, his name meant he who lived in the hills back of Northern-White-Water where I’m gonna go hiking, by God, it must be full of steep piney gorges and bamboo valleys and little cliffs.”

“I’ll go with you!” (me).


ジャック・ケルアック「ダルマバムズ」第13章

ジャフィー・ライダー(ゲーリー・スナイダー):「くそ暑い日に自転車乗りたいねん、パキスタンの革サンダル履いて、薄い麻の夏用の法衣を着て立ってる五分刈りの禅坊主に向かって高音でシャウトしてな、金閣寺に住みたいねん、ビール飲んで、バイバイして、家来(vassals) や船(vessels)でいっぱいの騒々しい横浜港に行って、期待して、なんとかして、帰って、行って、日本に行って、アメリカに帰って、白隠慧鶴を読んで、歯を食いしばって常に自分を鍛えて、どこにも行かんとな、で、学んで、なにもかも疲れ果てて病気になってうなだれて白幽子のすべてを知るんや。」

レイ・スミス(ジャック・ケルアック):「白幽子って誰やねん?」

ジャフィー:「名前は白くて暗いって意味でな、北白川の裏に住んでたんよ、わしそこへハイキングに行くねんけど、ああ、そこには険しい松の渓谷とか竹の谷とか小さい崖があるんやで、しらんけど。」

レイ:「わしも一緒に行くで!」


なるべく原文の勢いと、語順を生かして訳したら、こんな感じ。

ケルアックが有名にした、"spontaneous prose" (自然な流れの散文)の好例やな。

しかし、こんなもん、英語で読まなあかんわな。日本語にするのは無理がある、基本、ケルアックの小説て長い詩みたいなもんやしな。日本語訳とかナンセンスやわ。「ダルマバムズ」が最初に翻訳されたときの題名なんて「禅ヒッピー」ですぜ?すでに日本語である「ダルマ」すら使われていない。でも、いずれ「オン・ザ・ロード」と「ダルマバムズ」の翻訳には挑戦したいと思ってるんよね。


「ダルマバムズ」って、1958年に発行されたんやけど、前年に出た「オン・ザ・ロード」がベストセラーになったおかげで結構売れたんよね。「オン・ザ・ロード」は「The America」って感じの小説やけど、「ダルマバムズ」は、アメリカのヒッピー文化の走りみたいな話と、仏教や禅の話が混ざっててすごい面白いんよね。この2つの小説なしにはヒッピー文化は生まれなかったんちゃうかなと思うぐらい。そういえば、ジョン・F・ケネディの嫁はんのジャッキーが飛行機の中で「ダルマバムズ」を読んでる写真がある。まあ、それぐらい当時流行った小説ってことやね。ジャッキーは飛行機の中で「ん?白幽子って誰やねん?」って思ったはずやな、ま、13章まで読んだとすればの話やけど。

しかし、この文章を、日本に来たことすらないケルアックが書いたっていうのが面白いんよね、まあ、その後実際に来日して京都に住んだゲーリー・スナイダーの話に基づいて書いてるんやろうけどね。ゲーリー・スナイダーは京都に来てすぐにこの地を訪れたやろな。

コロナ禍も3年目で、過去最高の感染者を記録している中、誰もいない山の中にあるobscure(辺鄙)な白幽子の住居跡を見に行くという、なんか秘め事のような素晴らしい旅であり、禅な時間であった。

最後に、一緒に行ってくれた嫁はんと、行き方と詳しい情報を提供してくれた徹さんに感謝。


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